YouTubeチャンネル「東幸海運タンカーの日常」でご紹介しているタンカー船のことを体系的に学べるよう「タンカー船大辞典」というブログを開設し、動画の見どころや補足ポイントを解説していきます。トップページではタンカー船の基本についてご紹介します。
ジャンル：船会社について、タンカーの設備と船体、船員さんの基礎知識、甲板部、機関部、
タンカー船って何？→内航船、内航タンカーについて
タンカーとは「タンクのある貨物船」のことで、液体やガスなどを運ぶ船舶です。
中でも東幸海運は国内の石油輸送を専門とするタンカーを中心にしています。
5隻の大型石油タンカーで石油製品などの国内輸送を行っています。
タンカー船にはどんな船員さんが乗ってるの？→全員日本人です。
国内の船での輸送を行う内航船。内航船に乗れるのは、原則として日本人の船員さんだけというルールがあります。消防や警察の方と同じで、非常時のインフラは自国で従業制限というルールがあるためです。従って、当社の船員さんは日本人のみです。
タンカーの船員さんはどのような働き方？乗船期間と休暇は？
基本的に3か月乗船したら1カ月の休暇というサイクルです。
タンカーの船員さんは１隻に何人乗ってるの？（内航船）
東幸海運のタンカー１隻あたりの定員は11名です。法定最低限の定員である9名より多くの船員さんを乗船させることによって、1人当たりの負荷が過剰にならないよう調整しています。
また、東幸海運のタンカーには1隻あたり船室が14室あります。これは新人船員さんの育成環境を整えるためです。東幸海運の5隻のタンカーのうち4隻は国土交通省の船員教育実習船(4級海技士および機関士養成)にも指定されており、社船実習の研修を行える機材が配置されていることが認定されています。
2017年より若年船員計画的育成事業者としてNo1を獲得。女性船員の採用は20年以上継続しており、在籍年数が10年を超える女性乗組員や女性幹部職位もいます。昨年は国交省の冊子「フネージョ」にもとりあげられるなど、名実ともに性別を問わない若手船員の育成に力を入れています。
タンカー船の船員さんにはどんな種類があるの？11名の内訳は？
先ほどの1隻あたりの定員11名の内訳は、甲板部が7名、機関部が3名、司厨部が1名です。甲板部は船長または航海士(または海技免状を所持する甲板長)3名と見張り員となる甲板手または甲板員の2名で操船を行います。内航の大型船(750トン(総トン数：G/T)以上)では2人で当直を行うので、2人当直船と呼ばれます。これに対して749G/T以下の中型・小型の船舶では原則として操船時の当直は1人です。一般的に1人当直船のお給料が高いと言われるのは完全に1人で4時間の当直を行いきる必要があるためです。東幸海運のタンカーは5隻とも5000トンクラス以上の大型船ですので、2人当直。新卒早々で操船を任されることはあり得ません。定員11名の内訳は下記のようになっています。
甲板部 7名（船長、航海士、甲板員など）
甲板部は一番人数が多い部署で、船長、航海士、甲板長、甲板手、甲板員の役職があります。一番の仕事は操船と荷役(にやく)と呼ばれる作業です。
大型タンカーでは航海中は、常時2名の人間で船を操縦しなければならないのです。
機関部 3名(機関長、機関士など)
船を工場(ドック)でメンテナンスできるのは年1回だけ。なので、航海士ながら船のエンジンや発電機などの機器をメンテナンスし続けるのが機関部のお仕事です。荷役の手伝い、タンク清掃（手当あり）なども行います。
司厨部 1名(司厨長など)
船に乗っている船員さんの食事を作るのを専門にしています。基本的には1人で11~14名分の食事を作ります。スーパーなどへの買出しは他部署の船員さんにも手伝ってもらいます。
司厨長になるには、船舶料理士という資格が必要です。調理師または栄養士の資格を持っている人を社内育成します。
タンカーの船員さんのお給料は？昇進するには？東幸海運の場合
新卒の初任給で海技免状の3級所持（船舶系大学、商船高専、水産高校専攻科）の方の乗船時給与は33万円プラス白油船乗船時のタンク清掃手当約3～４万円となります。4級の場合は乗船時給与が32万円、水産高校(本科、甲板部当直資格所持)の場合は30.5万円となり、それぞれ白油船乗船時はタンク清掃手当が加算されます。給与の改定は年1回、昇進は年2回チャンスがあります。
平均給与アップは2021年の例で年間約1.2万円です。毎月の評価を総合して役職ごとの役割のポイントの加算が大きい方は年間5万円程度昇給することがあります。評価基準を満たさない方については昇給が全くない場合も僅かながらあります。評価制度および基準については外部のコンサルティング会社（識学）により客観的に作成されています。誰が評価しても同じ点数になるように毎年何度も制度改善を行っております。
タンカーの船員さんはボーナス(賞与)があるの？東幸海運の場合
東幸海運の船員さんの場合、賞与は年間2回、7月と12月にボーナスが支給されます。ボーナスの金額は乗船時給与をベースに各1か月程度が支給されます。多くの会社では10万円以上安い基本給がベースとなることが多いため比較的高い部類に入ると思われます。なお、ボーナスは自動計算だけでなく、毎月の評価項目の点数が加算される仕組みです。毎月自分の役職の役割や上位職の仕事を任されて評価されればその分もどんどんボーナス時に加算される仕組みになっています。
気になるタンカー船員さんの年収は？
初年度の年収は3級海技免状所持者で2回白油船乗船、1回黒油船に乗船したケースで計算するとモデル賃金が年収約450万円となります。乗船中の食事等は無料で支給されますのでお金はためやすい環境と言えると思います。入社2年の船員さんが450万円の車を一括払いで現金購入することもあるほどです。会社によっては食事代を現金で渡して、それも年収や給与としてうたう場合もありましたが、現在では明確に禁止（現在は食料購入のレシート提示を要求されます）されています。東幸海運のタンカーでは各船に船舶調理師（コックさん）が乗っていて、ご飯が提供されますので自炊などは不要です。
組合船と未組織船、東幸海運は？
組合船とは、一言でいうと労働組合が強い船のことです。給与規定などが全国の海員組合という組織で一律に定められています。船員さんは海員組合の組合員となり、毎月組合費を組合に払います。例えば票令給と言ってその会社に何年いるかで給料が決まってくるなど、給料などの待遇は組合によって定められます。会社と船員さんで給料規定などを定めることはできず、全国組合のハンコをもらってはじめて労働協約が成立するという仕組みです。公務員さんなどに近い賃金体系といえなくもありません。
これに対して、全国組織の労働組合に加盟していない船員さんの勤務する船を未組織船といいます。未組織船の場合は、その会社の船員さんの過半数以上の合意があれば、就業規則や各種の規定を定めることができます。よって、会社独自の賃金規定を自社内で決定することができます。
東幸海運のタンカー船はかつては組合船でしたが、現在は未組織船です。
組合船じゃない未組織船は給料安いの？
組合船ではないので給料は安いのでしょうか？実際に平均値を取ると業界標準より少し高いお給料体系です。当社に限らず、あからさまに未組織船だから給料が安かったり、待遇が悪いということは少ないです。もしそうなら船員さんがいなくなってしまいますので。
なぜ組合船にしないのかというと会社の組織風土に合わないからです。組合船の場合、ものすごく積極的に働いて結果を出した人も、あからさまに手を抜いている人も毎年定額で昇給するシステムになります。当社の船員さんにこのシステムを良しとする人がいなかったため、数十年前から未組織船となり、今に至ります。
東幸海運の場合は実力主義です。このため、入社から3年も経つと大きく給料や役職が変わっていきます。毎年、数万円ずつ給料や役職が上がっていく人もいれば、あまり給料が上がらない人もいます。ほとんどいませんが、寝坊や遅刻、与えられた職務を放棄し続けると昇給がゼロということもありえます。これらの評価を行うのは直属の上司なので、船内の評価が給料に直結することになります。このため評価の公平さが大事になります。東幸海運では、3ヶ月毎に乗る船が変わるため、上司もころころ変わります。毎月の評価を公正な基準で行うため、評価制度のアップデートを繰り返しています。
その結果、新卒で入社して5年目に一等航海士や一等機関士になる船員さんがいるかと思えば、何年も同じ役職のままの船員さんもいます。
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