内航船(タンカー)のエンジンルーム(ひなた)

エンジン

今回はドックで整備中の内航タンカーひなたの
エンジンルームを分かりやすくご紹介します。動画の見どころと台本も公開しています。

内航船のタンカーの機関室(エンジンルーム)は3階建て

ひなたのエンジンルームに入ります

当社のタンカーのエンジンルームは3階建て構成です
上から、上段、中段、下段と呼ばれます

今いるのが上段で、中段と下段を見下ろしています。

メインエンジン 4サイクル 赤阪鐵工所 4500馬力(上段からメンテナンス中)

真ん中にあるのがメインエンジンです。
上部にある吸気弁と排気弁が取り外されて、
ビニールのカバーがかけられています。

給気弁と排気弁は陸上の工場に運ばれて整備中です。
弁が取り外された穴の部分には物が入らないように丸い板で蓋がされています。

メインエンジンの左に置かれているのがロッカーアームです。
カムから突き上げられたプッシュロッドという棒がロッカーアームを突き上げて、
弁の開閉を行っています。

内航船のエンジンの排熱利用エコノマイザー

メインエンジンの排気ガスは上部の排気ガス管を通って、
三方弁に送られます。
高い温度の排気ガスのみが上部の排気ガスエコノマイザーに送られます。

排気ガスエコノマイザーは、エンジンの排気ガスの熱で水を暖めてお湯を作る装置です。

右側にある四角いたて向きのダクトは当社の因島工場で作ったダクトです。
南極調査船や大型のコンテナ船のダクトと同じ工場で作られました。

タンカーの焼却炉はゴミは燃やさない

ズームしている部分の後ろにあるのが焼却炉です。

船の焼却炉はゴミを燃やすためではなく、ビルジやスラッジと呼ばれる油分を含んだ廃棄物を燃やすためにあります。

【内航船】タンカーのエンジンルーム中段の機器

それでは階段を下りて
エンジンルームの中段を見ていきましょう。

四角いダクトは当社の工場部門が製造したダクトです。

タンカーの荷役用エンジン、カーゴポンプの説明

タンカーに積まれた石油製品を陸上のタンクにあげる時には、船のカーゴポンプで陸揚げします。
このため当社の白油タンカーにはカーゴポンプを動かすための荷役用エンジンが設置されています。

荷役エンジンの後方にあるのがメインエンジンです。こちらはプロペラを回すことに特化したエンジンです。

タンカーの発電機用エンジンx2台(ヤンマー、メンテナンス用)

このほかに、中段には右舷と左舷、各1台ずつの発電機があり、船内の電気をここで起こしています。

発電機は業者さんによるメンテナンスのため、分解されています。

【内航船】タンカーの造水器で海水から真水を作る

中段の特徴的な設備として、造水器があります。
現在はプレートが取り外されていますが、海水から真水を作るための設備で、
1日に約10トンの真水を作ることができます。
この分厚い板と板の間に、この後ご紹介する造水器のプレートが何十枚も挟まっています。

3:05
造水器のプレートです。上下逆に置かれています。
汚れて見えるのが海水の通っているところ。
造水器全体を真空に近い状態にする仕組みになっていて、気圧を下げて低い温度で水を沸騰させる仕組みです。

当社の造水器を作ってくれているのは「アルファラバル」というメーカーさんなんです。
従来は真空にするための大きなボンネットがあって海水と真水で別のプレートでした。
ひなたからは真水と海水が一体化したプレート式になっています。

(飲み水ではなく、冷却水や掃除、トイレなどで使用されます)

海水と真水を熱交換するプレートクーラー

プレートクーラーについてご紹介します。
先ほど見てきたメインエンジンや荷役用、発電用のエンジンの冷却は海水ではなく真水を使用します。
海水を使うとすぐに傷んでしまうためです。

船で使用できる真水は限られるので、冷却水を使い捨てることはできません。

そこで、エンジンを冷やして熱くなった真水をこのプレートクーラーに持ってきます。
プレートは海水と真水が互い違いになっています。
冷たい海水をどんどんくみ上げてプレートクーラーに流すことで、真水を冷やしてあげて
冷却水として再利用する仕組みです。
真水の熱を海水に移すことから、熱交換と呼ばれます。

そこで、冷たい海水をくみ上げて、真水を冷却するプレートクーラーを使用して、真水を再利用しています。

4:13

タンカーの3台の清浄機

2台が燃料(主にメインエンジンのC重油)用で1台が潤滑油(システムオイル)用です。
油の中の水分や不純物を取り除く遠心分離機です。

燃料:C重油
システムオイル用:4サイクルなので、車のエンジンオイルと同じ役割ですが、システムオイルだけで7トンと量が多いので、結露などの水分除去や、混入した微細なゴミを取り除く必要があるのです。

コンプレッサーとエアリザーバータンク

5:10
続いてはコンプレッサーとエアタンクについてみていきましょう。
船のエンジンは電気ではなく高圧の空気、つまり、エアーで始動します。
このため、大量のエアーを作ってためておく必要があります。

このエアーを作る装置がコンプレッサーという装置で、ためておくタンクがエアーリザーバータンクと呼びます。

コンプレッサー2台
エアリザーバータンク2台

エアーリザーバータンク1台の空気でメインエンジンを最低7回は起動できる量の空気が貯められるようになっています。

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メインエンジン(中段から)

4000馬力の6気筒、4サイクルエンジン アカサカA45S(赤阪鐵工所製)

メインエンジンはプロペラを回すためのエンジンです。

メインエンジンはいっぱい動画があるので、こちらのプレイリストをご覧ください。

[プレイリスト:タンカーのエンジン特集]

エンジンルーム下段

タンカーの荷役用エンジンとオメガクラッチ

当社の白油タンカーでは1台の荷役用エンジンで複数のカーゴポンプを駆動させています。
荷役用エンジンは分速720回転で回転するので、各ポンプごとに必要な回転数に変換する必要があります。この役割を果たすのがオメガクラッチです。

オメガクラッチ(日立ニコトランスミッション製)によって、軸ごとに回転数を変えることができます。例外として、ポンプ以外に発電機にも軸が伸びています。バウスラスター用の発電機としても使用されます。

ポンプなどの軸の回転は危険なので、なるべく多くの巻き込み防止のガードを備え付けています。

船底弁

下段には多くの船底弁があります。海水を船内にくみ上げたり排出したりするためです。
この部分は傷みやすいので定期的に分解して確認と整備を行い状態が悪ければ交換しています。

プロペラ軸と中間軸のつなぎ。船尾管から海水が漏れないのは?EVKについて

船尾管手前にはEVK装置があります。これは水流を流して船尾管のプロペラの回転が滑らかに動き、なおかつ機関室側に水が漏れないようにしています。詳しくは別動画がありますのでこちらでご覧ください。


EVKの図解動画につきましては後日作成予定です。ご期待ください。

GSポンプ、非常用海水ポンプ

GSポンプと非常用消化ポンプは、冷却水などにする海水をひっきりなしに組み上げている重要なポンプです。お互いにバックアップできるように配管がつながっています。

予備品(メインエンジン)

メインエンジンのライナーやカムギアなど、一度でも壊れたことのある部品の多くは予備品として船内に備え付けられています。

エコノマイザーの清掃

排ガスエコノマイザーは排気ガスで汚れるため、毎年水洗いしています。

今回の動画

今回は白油タンカーひなたの機関室についてご紹介しました。内航船のタンカーのエンジンルームを分かりやすく動画を交えて解説しました。海水から真水を作る造水器、荷役用エンジン、オメガクラッチについても役割を理解しておくと、乗船時の役に立つと思います。

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